Q1:現在のお仕事を教えてください。
「現在、日本の大学院で経営学の専攻を希望する留学生を対象に、入試対策のサポートをしている塾を経営をしています。具体的には、研究計画書の作成から過去問題の分析と添削、面接対策、入試に関する日本語の指導などを行っております。」
Q2:現在のお仕事を始めるきっかけは?
「2010年4月に、岡山大学大学院社会文化科学研究科組織経営専攻の博士前期課程(修士)へ進学しました。そして、2013年3月に修了しました。その3年間は、とても学びの多い時間でもあり、とても多くのいろいろな悩みを抱え、苦しくもがいていた時間でもあります。博士前期課程(修士)は修了できましたが、修士論文の研究内容については、自分が納得できるものではありませんでした。疑問や課題しか残らなかったのです。
そして、博士前期課程(修士)修了後もゼミへ通い続け、2014年にゼミの教授から、大学院に在学している留学生と大学院を志望している留学生を対象に、ボランティアで入試対策のサポートを頼まれたことが、現在の仕事を始める最初の契機になっています。」
Q3:ちなみに、どうして大学院に行こうと思われたんですか?
「仕事をしていて、疑問に思うことが出てきたからです。」
Q4:大学院での学びの中で留学生を教えるという経験が今の仕事に結びついているんですね。
「初めてサポートした留学生は、1年2か月後に神戸大学大学院に進学しました。そして、2人目、3人目にサポートした留学生は、岡山大学大学院に進学し、約3年間、修士論文までをサポートしました。留学生が大学院に合格できた時の喜びの連絡や笑顔は、こちらも本当に嬉しく思いました。
その間、2015年4月に、私は岡山大学大学院社会文化科学研究科博士課程へ進学しています。このような環境の中で、留学生から困っていることや考えていることを聞くことが多くなりました。そして、留学生からのいろいろな声を聞いて、事業としてサポートをしたいと考えるようになり、2018年4月に、大学院進学塾LEARNPATH(ラーンパス)を開始しました。
LEARNPATHとは、「学び(LEARN)+ 進路(PATH)という意味であり、留学生の皆さんが日本の大学院へ進学し、自分の理想とする人生を実現してほしい」という思いが込められています。現在は、サポートした留学生の1人が、母国で大学の講師に就くとともに、日本への留学支援を行う塾を開設し、その塾と提携をしています。サポートした留学生の協力をいただきながら、1人でも多くの留学生の皆さんが希望をかなえられるように今後もサポートをしたいと思います。
Q5:今後のご自身のキャリアについてどうなりたいとか、どうしていきたいかなどを 教えてください。
大学院進学塾LEARNPATH(ラーンパス)を開始して、初めての受講生が大学院に合格できました。昨日、その受講生とお祝いのランチに行きました。大学院に合格できて、彼女の喜んでいる笑顔がみられて、こちらもとても嬉しかったです。今後も留学生の皆さんが希望する大学院に合格できて喜んでいる姿がみられるように、サポートを続けたいと思います。
編集後記
大学院進学塾LEARNPATH 代表川上佐智子さんは、留学生へのボランティアが起業のきっかけです。
このボランティア活動は、自分からというよりも頼まれて行ったものでした。
キャリア理論の中に、「個人のキャリアの8割は予想しない偶発的なことによって決定される」という理論があります。この理論は、「計画された偶発性理論(Planned Happenstance Theory)」といい、米国スタンフォード大学のジョン・D・クランボルツ教授が20世紀末に提唱したキャリア理論です。予期しない偶然の出来事にベストを尽くして対応する経験を積み重ねていくいとで、よりよいキャリアが形成されるという理論です。
川上さんもこの「計画された偶発性理論」によってご自身のキャリアを積まれています。
変化の激しい時代の今こそ、中長期的なキャリアプランも必要ですが、目の前のことを真剣に取り組むことで未来が開けることがあります。予期しない出来事をただ待つのではなく、自ら創り出せるように積極的に行動したり、周囲の出来事にアンテナを張ったりすることで、偶然の出来事を「意図的・計画的」にステップアップの機会へと変えていかれた事例ですよね。
計画された偶発性理論が示すように、偶然を自分自身でチャンスに変える積極性を大切にすることは、今後ますます重要になってくるのではないでしょうか?
次回は、この理論を実践するために必要な行動についてご紹介したいと思います。